1977年に「京都芸術短期大学」として創立され、画家やアーティストなど多方面で活躍する芸術家を輩出している京都芸術大学(旧名称 京都造形芸術大学)。そんな同校が、メールサーバのリプレースをきっかけに、激増するスパムメールの対策を主に、メールシステムの刷新に乗り出した。核となったのはTOKAIコミュニケーションズのメールASPサービス「OneOffice Mail Solution」。価格と機能比較だけではない、「サービスとしての信頼性」を高く評価した同校の取り組みとは。
※2020年4月1日より「京都造形芸術大学」は「京都芸術大学」に名称を変更しております。本事例記事内の名称はインタビュー当時のものです。
京都造形芸術大学といえば、芸術系大学ではいち早く通信教育課程を開設したり、小学校就学以前の児童とその母親を対象にした教育施設「こども芸術大学」を開校するなど、斬新な取り組みで知られていますね。そんなユニークな芸術教育・芸術家育成に盛んな貴校で、コミュニケーションインフラであるメールシステムの刷新に取り組まれた理由は、どのようなものだったのでしょうか。
井上:本校が初めてメールシステムを導入したのは1996年のことでした。2006年に次年度予算を策定する中で、メールサーバのリプレース時期に差し掛かっていることもあり、改めてメールシステムの課題や運用を見直そうという運びになったのです。メールサーバ自体は、メーカー側の保守打ち切りということもあり、どちらにせよリプレースが必須だったのですが、「それならいっそ、メールサービスにまつわるさまざまな課題を解決しよう」ということで、2007年に予算が下りると、問題点を詳細に洗い出しました。問題となったのは「スパムメール対策」と「学外からのアクセス許可」の2点です。特にスパムメールは深刻な問題で、学内に送信される全メールのうち、スパムメールの量がわずか数カ月で2倍弱にまで増えたのです。このため、メールサーバに負荷がかかり、レスポンスが遅くなるといった障害も発生していました。この状況を解決するため、スパムメール対策・学外からのアクセス確保という視点で、新しいメールシステムの検討を始めたのです。
スパムメールは、大学の公開アドレスに送信されたものですか。それとも、個々の教職員宛でしょうか。
井上:教職員宛のメールアドレスに送信されたものです。教員の方は、個人のWebサイトや研究室のホームページにメールアドレスを載せているケースもありますし、また昨今は、ランダムにメールアドレスを生成して勝手に送ってくるスパムが増え、とても対処しきれなくなったのです。例えば、春先には1日平均9万通だったスパムメールが、初夏には16万通に激増するといった具合でした。
スパムメールの増大により、メールサーバに負荷がかかり、情報システム室もその対応策に追われていたのですね。
井上:そのとおりです。しかし、限られた人数ですべてのシステムを運用しているので、急なトラブル発生に迅速に対応しきれないという課題がありました。そこで、システム運用・保守を一括してお任せできるASPサービスを視野に検討を始めたのです。ただ、これまで自分たちでメールシステムを作ってきたという実績もありますし、大学という組織は比較的「自前主義」が強いのも事実です。また、ASPサービスにも、サーバを共有する方式やアプライアンスサーバ方式など、いろいろ選択できます。そこで、2007年4月にプロジェクト計画書を作り、8月には概要設計書を作成して、協力SI企業から提案をしてもらいました。その間、「従来型のメールシステム」「ASP方式」「アプライアンスサーバ方式」それぞれについて分析を行い、稟議書を作りました。
最終的に、TOKAIコミュニケーションズの「OneOffice Mail Solution」というASP方式を選択されたわけですが、その際にポイントになったのはどのような点ですか。
井上:まず、従来型の「自前でメールシステムを構築・運用する」という方式は、初期費用や運用コストすべての負担が大きいという大問題がありました。一方、アプライアンスサーバを立てるという方式は、初期コスト・運用コスト共に最もメリットがあったのですが、メールサービスの課題である「スパムメール対策」という点では、別に費用が発生したり、スパムメール対策ツールがこなれていないという懸案も浮き彫りになったのです。これら2つの方式と比べ、ASP方式は、初期コストも運用コストも小さく、スパムメール対策もしっかりしていて、かつ「Webメール」という選択肢をあらかじめ選んでおけば、学外からのアクセスも可能になるという大きなメリットがありました。
先ほど、「比較的、自前主義という意識が強い」というお話がありましたが、ASP方式を採用することについて、不安はありませんでしたか。
井上:「ASP方式で行こう」と決めたあと、最も懸念したのは、「そのサービスが永続的なものか」という点でした。一見、高機能で使いやすく、価格も抑えられた「優良ASPサービス」というのはいくつもあったのですが、調べてみると、サービス開始から1年未満だったりするものも意外と多かったのです。外資系企業でメールのASPサービスを展開している企業もありましたが、いつ撤退して日本のサービスを閉鎖するかも分かりません。メールは、今日では欠かすことができないコミュニケーションインフラですが、インフラだからこそ、安定性やサービス継続性が求められます。ASPサービスを提供する企業には、電気・ガス・水道・電話と同じように、「ここと契約したら、いつでもインフラとしてメールを使える」という確固とした信頼性が必要です。そこで、あらゆるASPサービス提供企業を検討し、最終的に、TOKAIコミュニケーションズの「OneOffice Mail Solution」を含めた3つのASPサービスを比較することにしました。
他社のASPサービスと比べ、「OneOffice Mail Solution」を選ばれた理由について教えてください。
井上:ほかの2 つのサービスは、それぞれインターネットの黎明期からASPサービスを提供しているとのことで、信頼性は高いのですが、価格も高く、融通が利かなかったのです。「OneOffice Mail Solution」なら、基本サービスとしてWeb メール機能が入っておりますし、スパム機能を追加したければ「OneOffice SPAM Filtering」を選択すれば、高精度なスパムメール対策が期待できます。最も特徴的だったのは、そのうち1社に問い合わせをしたところ、すべてメールベースのやり取りだったこと。TOKAIコミュニケーションズは、担当者の方が来校し、対面でいろいろ説明してくれるという応対でした。ASPサービスのいいところは、「簡単に始められて、こちらも簡単に止められる」という点でもありますが、肝心なところでは、「対面や電話でコミュニケーションを取りたい」という思いもあります。すべてがメール越しのコミュニケーションだと、例えば障害発生時など、回答をいただくまでの間に相当のストレスがかかります。基本的には、メールのやり取りの方が楽ですし、それはそれでありがたいのですが、有事の際に別のチャネルも使えるというのは大きな安心感につながります。また、TOKAIコミュニケーションズは、親会社がガス事業を行っているということもあり、公共インフラを提供しているというのも、大きなポイントでした。
導入プロジェクトが発足した時期はいつごろでしょうか。
井上:学校側への説明を終え、2007年11月に導入プロジェクトを開始しました。年を越えると、長期休暇や入試シーズンを迎えることになるので、2007年中に導入しようということになったのです。
導入に際し、特に苦労した点や工夫した点などはありますか。
井上:旧メールシステムと、「OneOffice Mail Solution」を並行稼働する期間を設け、徐々に移行してもらうようにユーザーに指導しました。ユーザーマニュアルは、TOKAIコミュニケーションズから渡された資料を基にこちらで作成し、メールで全教職員約800名強に配布。並行稼働期間中に、旧メールシステムに来ているメールデータは、個人で自分のメーラーにダウンロードしてもらったので、「メールデータの移行」という煩雑な作業は不要でした。中には、「新しいメールの設定方法が分からない」という教職員の方もいらっしゃいましたが、大きなトラブルはなく、かなりスムーズに移行できたと思います。
導入後、そもそもの目的だった「スパムメール対策」と「学外からのアクセス許可」についてはいかがですか。
井上:導入後、驚くことにスパムメールがまったく来なくなったのです。たまに1〜2通ほど、フィルタリングをくぐり抜けたものが来ると「多いな」と感じるくらいです。そのため、最初のうちは「必要なメールが止められているのでは」と不安になり、Webで閲覧できるレポートを毎日見ていました。いまは大分慣れたので、当初ほど頻繁にレポートを確認することはなくなりましたが、驚くほどの効果でした。また、本校の教員は、教員でありながら会社を経営したり、アトリエで制作活動をしたりと、拠点をいくつも持っている方が多いのですが、Webメール対応にしたことで、学校・会社・アトリエ・自宅どこからでもメールを確認できるようになり、とても喜んでいるようです。
今後の方向性として、何かお考えになっていることはありますか。
井上:メールシステムがかなり便利になったので、これからはさらにインターネット上にあるさまざまなアプリケーションを活用して、トータルで使い勝手のよいシステムを作っていきたいと考えています。やはりTOKAIコミュニケーションズの「OneOffice Mail Solution」のように、信頼性のあるサービスであることが第一条件なので、引き続き考えていきたいと思います。
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